Japanese Language Test JLPT 1992 Question Sheet 2kyuu Dokkai Bunpou 1
問題用紙
1992 2級
読解・文法
日本語能力試験
(200点 70分)
問題1 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1、2、3、4から最も適当なものを一つ選びなさい。
これは、フランスで実際にあった話である。パリのある下町に、たいへん欲(注1)の深い肉屋がいた。毎日の食事や衣服を節約したり、女房にまでケチでとおした肉屋は、たいへんな財産をたくわえているというのでも有名だった。
ある日、その肉屋に、12歳ぐらいの女の子が肉を買いにやってきた。500フランの代金を払うという時になると、その女の子は「しまった。お金をわすれてきちゃった。おじさん、あとでお金もってくるから、①これちょっと預かって」といって、もっていたバイオリンをその肉屋にわたしていった。彼は、何気なく、そのバイオリンを店の隅のほうに置いておいた。
さて、それから30分くらいすると、一人の老紳士が、肉を買いにやってきた。1キログラムの牛肉を買い、代金を支払って店をでようとした時、その老紳士が、②店の隅にたてかけてあるバイオリンを見た。それを手に取って、じっくり見てから、大声でいった。
「このバイオリンはすばらしい。ストラディバリウスという世界的な名器だ。50万フランで買いたい。ぜひゆずってくれませんか」と熱心に肉屋に頼むのだ。
だが、肉屋にしてみれば、自分のバイオリンではない。売るわけにはいかない。そこで、肉屋は、持ち主の女の子に話して自分が買い受けてからこの老紳士に売ろうと考え、「明日の9時にもう一度ここへ来てください。③おゆずりしましょう」といって、その老紳士を帰した。
例の女の子は、すぐもどってきた。肉の代金を支払い、バイオリンを受け取って帰ろうとした。
「ねえ、そのバイオリン、④おじさんに売ってくれないかね。あまりよいバイオリンじゃないけれど、うちの子もバイオリンをこれから始めるので一つ欲しいんだよ」
女の子が、しぶしぶ売ってもよいという返事をした時、肉屋は「しめた。女の子をだました」と内心大喜びである。彼は5万フランでそのバイオリンを彼女 からゆずり受けることに、まんまと成功した。先ほどの紳士に、50万フランで売れば、45万フランの儲けだ。かれが喜んだのも当然だ。肉屋は、その女の子 をだまして悪いと思ったのか、先ほどの肉の代金を返してやった。彼の良心が、子どもをだますことをよしとしなかったのであろう。
問(1) ①「これ」とは何か。
1.500フラン
2.買った肉
3.バイオリン
4.衣服
問(2) ②「店の隅にたてかけてある」とあるが、だれがたてかけたのか。
1.肉屋
2.肉を買いにきた女の子
3.老紳士
4.肉屋の子
問(3) ③「おゆずりしましょう」とあるが、だれがだれにゆずるのか。
1.女の子が肉屋に
2.肉屋が老紳士
3.女の子が老紳士に
4.肉屋の子が老紳士に
問(4) ④「おじさん」とはだれか。
1.ストラディパリウス
2.肉屋
3.女の子のおじさん
4.老紳士
問(5) ⑤「やってこなかった」とあるが、それはなぜか。
1.50万フランを用意できなかったから。
2.バイオリンが欲しくなくなったから
3.肉屋からお金を手に入れたから
4.ほかに用事ができたから。
問(6) 肉屋は、女の子にバイオリンの代金としていくら渡したか。
1.50万フラン
2.45万フラン
3.5万500フラン
4.5万フラン
問(7) 肉屋についてこの文章からわかることは何か。
1.お金を儲けること がとても好きである。
2.老人をだますこと がとてもすきである。
3.子どもをだますこと がとても好きである。
4.バイオリンを買うこと がとても好きである。
問(8) この文章で筆者がいちばん言いたいことは何か。
1.大人は子どもにだまされやすい。
2.子どもをだますことはよくない。
3.欲の深い人ほどだまされやすい。
4.欲の深い人をだますことはよくない。